そもそも「政治家」にはどんな種類がある?
「政治家」と一口に言っても、実はいくつかの種類がある。まずはここを整理しよう。
- 国会議員:衆議院議員(465人)と参議院議員(248人)。国の法律を作る人たち
- 地方議員:都道府県議会議員、市区町村議会議員。地方の条例や予算を決める
- 首長:総理大臣、都道府県知事、市区町村長。行政のトップ
- 大臣:各省庁の責任者。国会議員から選ばれることが多い
テレビで見る「国会中継」に映っているのは主に国会議員だが、日本全体の政治家の数は約3万人以上。実は身近なところにたくさんいるのだ。
国会議員の1日をのぞいてみる
「国会議員って普段何してるの?」という疑問に答えるために、典型的な1日を見てみよう。
国会議員の典型的な1日
- 7:30〜8:00:部会(党の政策勉強会)に出席。法案や政策について党内で議論する
- 9:00〜12:00:委員会に出席。法案の審議、質疑応答を行う
- 12:00〜13:00:昼食(支持者との会食や勉強会を兼ねることも)
- 13:00〜17:00:本会議、委員会の続き、または議員会館で事務作業
- 17:00〜19:00:来客対応、陳情の聞き取り、支持者への挨拶回り
- 19:00〜22:00:懇親会、パーティー、地元への移動
見ての通り、朝から晩まで人と会い続ける仕事だ。「国会で寝ている」というイメージがあるが、実際にはその前後でかなりの業務をこなしている(もちろん寝ている議員もいるが)。
法案審議の流れ:法律ができるまで
政治家の最も重要な仕事が「法律を作ること」だ。では、法律はどうやってできるのか。
ステップ1:法案の提出
法案には大きく分けて2種類ある。
- 内閣提出法案(閣法):政府が作って国会に提出する。全体の約8割を占める
- 議員立法:国会議員が自ら作って提出する。衆議院は20人以上、参議院は10人以上の賛成が必要
実は法律のほとんどは内閣(官僚)が作っている。議員が一から法律を書くケースは少ない。これが「政治家は何もしてない」と言われる原因の一つでもある。
ステップ2:委員会での審議
提出された法案は、まず関連する委員会で審議される。衆議院には17の常任委員会があり、法案の内容に応じて振り分けられる。
委員会では、法案の内容について質疑応答が行われる。野党は問題点を追及し、与党は法案の正当性を主張する。ここでの議論が法案の修正につながることもある。
ステップ3:本会議での採決
委員会を通過した法案は、本会議で採決される。衆議院と参議院の両方で可決されれば法律が成立する。衆議院で可決されても参議院で否決された場合、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決できる。
委員会の仕組み:政治家の「本当の戦場」
テレビで映るのは本会議が多いが、実は政治家の本当の戦場は委員会だ。
衆議院の常任委員会は以下のようなものがある。
- 予算委員会(最も注目される。首相への質問が行われる)
- 総務委員会(地方行政、選挙制度など)
- 法務委員会(刑法、民法など法律全般)
- 外務委員会(外交、条約など)
- 財務金融委員会(税制、金融政策など)
- 厚生労働委員会(医療、年金、雇用など)
各議員は最低1つの常任委員会に所属する義務がある。委員会での発言や質問が、その議員の「仕事ぶり」を最も反映する場だ。
地方議員との違い
国会議員と地方議員では、仕事の内容がかなり違う。
国会議員 vs 地方議員の違い
- 作るもの:国会議員は法律、地方議員は条例
- 扱う予算:国会議員は国家予算(約110兆円)、地方議員は自治体予算(数十億〜数兆円)
- 活動範囲:国会議員は東京中心、地方議員は地元中心
- 議会日数:国会は年間約150日、地方議会は年間約80〜100日
- 兼業:国会議員は基本的に専業、地方議員は兼業が多い
特に市区町村議員は兼業の人が多い。農業をしながら議員をやっている人や、会社を経営しながら議員をしている人もいる。「政治家=お金持ち」のイメージがあるが、地方議員の報酬は月30万〜50万円程度で、決して高くはない。
政治家の給料事情
気になる政治家の給料を見てみよう。
- 国会議員:歳費(月給)約130万円+期末手当(ボーナス)年間約635万円。年収約2,200万円
- 内閣総理大臣:年収約4,000万円
- 大臣:年収約3,000万円
- 都道府県知事:年収約1,200万〜2,400万円(自治体による)
- 市区町村長:年収約800万〜1,800万円
- 市区町村議員:年収約400万〜800万円
国会議員の年収2,200万円は高く見えるが、これに加えて文書通信交通滞在費(月100万円)や立法事務費(月65万円)が支給される。秘書の給与も国が負担する。
ただし、選挙にかかる費用は自腹の部分も多く、選挙1回で数千万円を使う議員も珍しくない。稼いでいるように見えて、実は出費も莫大なのだ。
選挙と政治の関係:なぜ政治家は選挙ばかり気にするのか
政治家が「選挙のことばかり考えている」と批判されることがある。しかし、これは制度上仕方がない面もある。
衆議院議員の任期は4年だが、解散があればいつでも選挙になる。参議院議員は6年だが、3年ごとに半数が改選される。つまり、常に次の選挙を意識しなければならないのだ。
選挙に落ちれば「ただの人」。どれだけ素晴らしい政策を持っていても、当選しなければ実現できない。だからこそ、政治家は地元の支持者との関係を大切にし、パーティーや会合に顔を出し続ける。
これは「悪い」ことではなく、民主主義の仕組みそのものだ。国民の支持がなければ政治家でいられないという制度が、政治家を国民の方に向かせる力になっている。
まとめ:政治家の仕事を知れば、政治が身近になる
政治家の仕事は、法律を作り、予算を決め、国民の声を政策に反映すること。委員会での審議が中心で、それ以外にも支持者対応や政策研究など、多岐にわたる業務をこなしている。
もちろん、すべての政治家が真面目に仕事をしているわけではない。しかし、「何をしているかわからないから批判する」のではなく、「何をしているかを知った上で判断する」方が建設的だ。
選挙の時に「この候補者は委員会で何回発言したか」「どんな法案に関わったか」を調べるだけでも、投票の質はぐっと上がる。政治を他人事にしないことが、結局は自分の生活を良くする第一歩なのだ。